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嬉しいもんだな。
今までは名字で呼ばれようと名前で呼ばれようと何とも思わなかったのに。
ふわふわした気持ちを落ち着かせようと残りの弁当を掻き込んだら喉につまりそうになり、慌ててお茶を飲んだ。
━━死ぬかと思った
ほっとしてため息をついていると、川上と目があった。
「大丈夫か?」
「ああ……」
「良かった。それじゃあ、あれを何とかしろよ」
あれ、と言われた方を見ると、田辺が米一粒ずつをチマチマと食べている。あんな食べ方だと昼休みが終わるまでに食べ終わらないぞ。
田辺に一体何があったんだ?
川上に視線を戻すと、名前だよと言われる。
「正隆だろ、覚えてるよ」と返すと
「それはどうも。じゃなくて田代の名前を出来るだけ優しく呼んでやれ。伸也だからな」と命令口調で言われた。
安藤も「優しくな」と言ってくるので、仕方なく「伸也」と呼び掛ける。
すると、せわしなく動いていた田代の箸がピタッと止まった。
「もう一度だ」
川上に促されて再び「伸也」と呼ぶと……。
「……はい」
田辺が小さく返事をして、俺をびっくりしたように見つめた。
━━箸落ちたけど、大丈夫か?
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