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「冬樹、母と妹の楓花だよ」
びっくりしている俺に一穂が紹介してくれる。
「あ、こんばんは。一穂君と同じクラスの桜庭です。一穂君に怪我させてしまってすみません」
「怪我したのは僕のせいだよ。冬樹は全然悪くないから」
一穂がすぐに庇ってくれる。
良い奴だなと思って一穂を見ていると、足に何かが飛び付いてきた。
うわ、と声を出して足元を見ると、一穂の妹の楓花ちゃんが足に抱きついていた。
「お兄ちゃんはかずくんのお友達?」
「うん、そうだよ」
「算数好き?楓花あんまり好きじゃないの。宿題教えてくれる?」
突然勉強を教えてとねだられて戸惑っていると、一穂が「勉強なら僕が教えてあげるから」と助け船を出してくれた。
「ダメ。かずくんは答え教えちゃうから。お兄ちゃんは楓花に勉強教えるの嫌?」
「嫌、じゃないよ」
「やったー。じゃあ、楓花の部屋に来て」
えっとそれは流石に……。
楓花ちゃんには悪いけど断ろうと口を開いた時、「そうね。何かお礼しないとってずっと思ってたから、良かったら夕飯食べていって。沢山作るから遠慮しないで」とお母さんに誘われてしまった。
楓花ちゃんとお母さんに見つめられて助けを求めて一穂を見ると、2人と同じ期待の目で俺を見ている。
「……じゃあ、少しだけお邪魔します」
「わーい。お兄ちゃんこっちだよ」
楓花ちゃんに手を引かれて一穂の家に入った。
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