友達

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楓花ちゃんがゆっくりだが確実に問題を解いていく姿を見ていた一穂が、俺にありがとうと言った。 「別に……」 気恥ずかしくなってぶっきらぼうに返すと、一穂がクスクスと笑う。 誰かとこんな風に過ごすのは久しぶりだ。そう言えば皐月も九九が苦手で、何度繰り返しても8×3を21と言ってしまい、指摘する度に泣きそうになっていた。3×8はちゃんと24と言えるのに。 「どうかした?」 「いや。何でもない」 皐月の事を考えても仕方がない。先に離れたのは俺だ。俺が男子校に行くって決めたすぐ後に、皐月も大きな決断をしたんだ。 「かずくん、お兄ちゃん、ぜんぶできたよ」 楓花ちゃんのはしゃいだ声に意識を戻す。手元のプリントは全部埋まっており、答えも合っている。 「全問正解だ。すごいね」 「やったぁ。ママに見せてくる」 楓花ちゃんが居なくなると、途端に静かになった。 「可愛いな」 「うん。でも、冬樹に(なつ)きすぎ」 まさか可愛い妹を取られたって焼きもちやいてるのか? 「拗ねるなよ。お前の妹を取ったりしないから安心しろ。一穂も相当なシスコンだな」 「そうじゃなくて……。もういいよ。ねぇ、夕食が出来るまで僕の部屋に行こう」 一穂が何かを言いかけた気がしたんだが………。
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