友達

13/15
前へ
/80ページ
次へ
父親の慎二(しんじ)さんはいつも帰りが遅いらしく、楓花ちゃんと母親の早代子(さよこ)さん、そして俺と一穂の4人が席についた。 「かずくん、足なおってよかったね。おめでとう」 楓花ちゃんが一穂に小さな花束を渡した。 「ありがとう」 2人が微笑ましくて、俺の頬も緩む。 ニヤニヤしてないか気になって顔を触っていると、「一穂も桜庭君も沢山食べてね」と早代子さんに言われて全快祝いが始まった。 テーブルの上には沢山の料理が並んでいるが、中でも目を引くのが大量の唐揚げだ。 「いただきます」 手を合わせると、楓花ちゃんが「はい」と唐揚げを取り皿にとってくれた。 「ありがとう」 「あのね、ママの唐揚げすごくおいしいの。楓花もかずくんも大好きなんだよ、ねー」 「うん。美味しいから冬樹も食べてみて」 頷いて唐揚げにかぶりつく。中からじゅわっと肉汁が出てきて美味しい。 「おいしい?」 楓花ちゃんに聞かれて「すごく美味しいよ」と答えると、3人がとても嬉しそうに笑った。 「どんどん食べてね」 「はい」 早代子さんと楓花ちゃんが一穂に似てるからか、初めておじゃましたのにすごく居心地がよくてびっくりする。 沢山食べて笑うそんな楽しい一時が終わり、コーヒーでも入れるよと一穂が席を立った。 その時。 「ねえ、お兄ちゃん。正宗(まさむね)お兄ちゃんを知ってる?」 楓花ちゃんが俺の袖を引いて、まるでないしょ話でもするように小さな声で聞いてきた。
/80ページ

最初のコメントを投稿しよう!

467人が本棚に入れています
本棚に追加