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父親の慎二さんはいつも帰りが遅いらしく、楓花ちゃんと母親の早代子さん、そして俺と一穂の4人が席についた。
「かずくん、足なおってよかったね。おめでとう」
楓花ちゃんが一穂に小さな花束を渡した。
「ありがとう」
2人が微笑ましくて、俺の頬も緩む。
ニヤニヤしてないか気になって顔を触っていると、「一穂も桜庭君も沢山食べてね」と早代子さんに言われて全快祝いが始まった。
テーブルの上には沢山の料理が並んでいるが、中でも目を引くのが大量の唐揚げだ。
「いただきます」
手を合わせると、楓花ちゃんが「はい」と唐揚げを取り皿にとってくれた。
「ありがとう」
「あのね、ママの唐揚げすごくおいしいの。楓花もかずくんも大好きなんだよ、ねー」
「うん。美味しいから冬樹も食べてみて」
頷いて唐揚げにかぶりつく。中からじゅわっと肉汁が出てきて美味しい。
「おいしい?」
楓花ちゃんに聞かれて「すごく美味しいよ」と答えると、3人がとても嬉しそうに笑った。
「どんどん食べてね」
「はい」
早代子さんと楓花ちゃんが一穂に似てるからか、初めておじゃましたのにすごく居心地がよくてびっくりする。
沢山食べて笑うそんな楽しい一時が終わり、コーヒーでも入れるよと一穂が席を立った。
その時。
「ねえ、お兄ちゃん。正宗お兄ちゃんを知ってる?」
楓花ちゃんが俺の袖を引いて、まるでないしょ話でもするように小さな声で聞いてきた。
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