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はしゃぎすぎて寝てしまった楓花ちゃんを早代子さんが部屋に連れていったので一穂と2人きりだ。
━━大好きな人か………
楓花ちゃんからもらった花を嬉しそうに眺めている一穂を見ながら、コーヒーに口を付けた。
大好きな人が大親友を表しているのか、恋愛的な意味での大好きを表しているのかは分からないが、一穂に大好きと言われる奴が何故かすごく羨ましいと思った。
「冬樹、どうしたの?」
「何でもないよ。今日はありがとう。すごく楽しかった。
「こちらこそありがとう。冬樹が来てくれて嬉しかったよ。楓花もすごく懐いてたし。………冬樹って、女の子にモテるよね?」
何故か一穂がちょっと怒っているような気がした。
「モテないよ」
「嘘だ。あの時も告白されてたよね?」
初めて一穂にキスした日の事だ。
「あれは……」
「あっ、別にいいよ。冬樹がモテるかどうかなんて僕には関係ないもん」
一穂の言葉が心に深く突き刺さった。
そうだよな、一穂には大好きな正宗君がいるんだから、友達の俺の事なんてどうでもいいんだよな。
「……帰るよ」
「えっ?」
なんだか泣きそうになって、それを見られたくなくて立ち上がった。
「また明日迎えに……ああもう必要ないんだったな」
「冬樹……」
「見送りはいいから。じゃあ、学校でな」
俺は鞄を掴むと急いで玄関に向かった。
嬉しかった友達という関係が、なんだかすごくちっぽけに感じた。
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