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欠伸をしようとして、口にピリッとした痛みを感じた。
そう言えば昨日殴られたんだ。
ベッドから起き上がり洗面所の鏡を見ると、口の端が切れてそこから頬にかけて紫色になっていた。
「殴られたってバレバレだ」
学校休むかな……そう思った時、「ほい」とマスクを渡された。
「何これ?」
「マスクだよ」
「だから、何でマスク?」
「それしときゃ分からないだろ。冬樹、お前まさかそんな事で学校を休もうなんて思ってないよな!」
うわ、怖っ。
7つ離れた兄の睦月に睨まれて、俺は言葉に詰まった。
どうして殴られたのか追求され済んでずホッとしたが、ずる休みは許してもらえそうもない。
「分かった、行くよ」
「当たり前だ。入学してまだ3日目なんだ。こんなに早くサボらせるわけにはいかない」
睦月はきゅっとネクタイをしめると、少しだけ表情をゆるめた。
「何か困ったことがあれば言えよ」
「うん。でもこれは大丈夫だから」
「分かった。じゃあ、俺は行くから鍵はよろしくな」
この4月から社会人になった睦月は、毎朝俺より早く家を出る。それなのに……やっぱり。
食卓には目玉焼きとウィンナーの乗ったお皿があり、その隣にはロールパンが入った袋とカップスープの素が置いてある。
「いただきます」
カップスープを作りロールパンを少しだけ焼いて、俺は手を合わせた。
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