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戸惑う一穂も可愛い、なんて思っていると、目の前に黄色いものが迫ってきた。
何かと思ったら、伸也が卵焼きに箸を突き刺して俺の目の前に近づけていた。
「あーん」
卵焼きが口の位置に下がってきたのでパクリと食べると、伸也が満足そうに笑った。
「何やってるの?」
正隆が伸也に聞くと「餌付け」と答えている。
━━よく分からないが、うまいからいいか。
それよりも腕の中にいるこの可愛い生き物をどうしよう。とりあえず両想いか確かめて、もしそうなら……キスがしたい。それもとびきり甘いキスが。
これまでしたあんな一方的な自分勝手なキスじゃなくて、お互いが求め合うようなキスがしたい。
「一穂、次サボろうか……」
耳に囁くと、一穂が小さく頷いた。
「俺達早退するから担任に言っといてくれ」
クラス委員である千景に言うと、「いや、ちょっとそれは……」と困っている。
「理由は任せたから。一穂、帰る用意して」
教科書を鞄に詰めると、さっさと教室を後にした。
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