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こんな時に行ける場所が自宅だけだなんてちょっと情けないが仕方がない。
一穂より少し先の駅にある自宅に案内した。
「おじゃまします」
「ぞうぞ。今兄貴と2人暮らしなんだ。兄貴は仕事行ってるから気を使わなくていいよ」
「2人暮らし?」
「そう、父親の転勤に母親が付いていったんだ」
冷蔵庫から緑茶のペットボトルを2本取ると、一穂を連れて階段を上がる。
「ちょっと散らかってるけど」
あまり物が無いので、散らかってるのは脱ぎっ放しにしていたパジャマと本くらいだ。俺は床にどかりと胡座をかいた。一穂が少し開けて座る。
お尻痛いかなとクッションを渡すと、一穂は複雑な顔をして首を横に振った。
「いらないの?」
「うん。だって………女の子からのプレゼントだろ」
これって焼きもち?可愛いな。
「あー、違う違う。去年みんなでゲーセンに行った時、誰が一番UFOキャッチャーが上手いか競争になって1000円かけて取ったのがそれ。だからもったいなくて捨てられないんだ」
「冬樹が取ったの?じゃあ、借りる」
一穂は隣に置いたクッションをぎゅっと抱き締めた。
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