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「サボっちゃったね」
クッションから顔をあげて俺を見る一穂が可愛すぎる。
ダメだ。一度好きだと認めてしまったからか、気持ちに歯止めがきかない。
一穂に触れたい。キスしたい。
でも、まずは一穂の気持ちを確かめないといけない。俺に対する気持ちが友情かそれ以上かを。そのためにはまず俺の気持ちを伝えなければ……。
「一穂……」
呼び掛けだだけで、声が震える。分かっていたつもりだったけど、告白するってこんなに緊張するものなんだ。
「俺、お前の事が好きだ」
「えっ?冬樹、今なんて……」
教室で抱きしめた時から俺の気持ちなんてバレバレだと思っていたのに、本気で驚いている一穂を見て怖くなる。
逃げたい。でも、今逃げたら絶対に後悔する。
「一穂が好きだよ。会長にも他の奴にも取られたくないんだ」
一穂の目が見開かれ、涙が一筋こぼれ落ちる。
「でも、俺は男だよ。学園の生徒の中には男同士で付き合っている人もいる。あそこに長くいるとそれが普通に感じてしまうんだ。だけど冬樹はまだ来たばっかりだし、それにやっぱり女の子が好きなんだろ?」
「うん、確かに男同士とか今まで考えた事もなかったよ。けど、今まで好きな女の子も出来なかったんだ。大事な子が傷つけられる所を見て、女の子が嫌になった事も原因かな」
俺の言葉に一穂が辛そうに目を伏せた。
「大事な子って皐月って名前?」
ああ、正隆が言った言葉を気にしていたのか……。
「そう。皐月は俺の大切な幼なじみだよ」
「冬樹はその子の事……」
「ああ、そうなれば良かったのかな。でも、現実は違った。皐月は妹みたいな存在で、どうしてもそれ以上には思えなかった。……だから、告白は断ったよ」
皐月の泣き顔が目に浮かんだ。
結局、俺が一番彼女を傷つけたんだ。
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