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「お前、素直な奴だな。だから、一穂にも伸也にも好かれるのか………」
一穂はともかく伸也には好かれてないと思う。嫌われてないのは分かるけど。
5人で弁当を食べるようになって3ヶ月、伸也は相変わらずお手伝いさんが作った豪華弁当を持ってきて、餌付けと言いながら俺におかずをくれる。たぶん俺がパンばかり食べているのを不憫に思っているのだろう。
俺も兄貴も料理はからきしで、食べれたら何でもオッケーなので惣菜や弁当、インスタント食品ばかり食べている。だから当然昼も買ったもので、食べやすいパンが多い。
本音を言うと、伸也におかずをもらうと一穂が不機嫌になるから面倒なんだけどな……。
「会長は一穂が好きなんですか?」
中庭で会った日、一穂ならオッケーと言っていた言葉がずっと気になっていたんだ。
「好きというか、可愛がっていたことは確かだ。一穂とは数少ない電車通学仲間だったからな」
驚く事にこの学園で電車通学をしているのは、ほんの一握りしかいない。大多数の生徒は車で送迎してもらっているんだ。放課後に門の前にずらりと高級車が並ぶ光景を最初に見たときは、ひいたくらいだ。
「会長も電車通学だったんですか?」
「中学はな。今は生徒会が忙しくて車にしているけれど」
つまり、あえて電車通学にしてただけって訳だ。
一穂の家は父親が証券マンで収入は多そうだけど、自分の将来は自分で切り開けという教育方針みたいで電車通学させている。
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