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――私は、唐突に起きた異変と共に現れたモノと対当していた。漸く見付けたエレベーターに乗り込む刹那、彼女は不敵な笑みを浮かべて私の手のこうに噛み付く。何故、避けられなかったのだろう、自身はただ母親に頼まれて買い物に来ていただけだと言うのに。
始りは、私が買い物に来ていた刹那。五階建ての妙なビルに周りには異様さが目立つ何かが蠢いていた、彼等は人間だった、しかし気付くと辺りの光景は赤黒い血の海へと染まっていたのだ。狂気で可笑しくなった、人間が人を襲う。映画か何かなのだろう、最初は誰もがそう疑わなかったのだが。
『クイ、クイモノ……』
それは、人間の皮を被った化け物だった、後にその事を人々が知るのはもう数人の被害が出た頃だ。飛び交った悲鳴や断末魔が時折に走る間際に聞こえていた、けれど所詮は赤の他人、互いを救い合うお人好しなんて周りには居なかった。
一斉に駆け出す店員、先ずはその人達が化け物のかっこうの餌食にされた。妙な咀嚼音を立て、手から伸びた鋭い爪を人間の肩に突き刺すモノはぷっつりと牙を立てた。ゾンビ、ヴァンパイア、将又得体の知れない歪な生物がそれを美味しそうに嘱して行く。
「っ、はぁっ、はぁっ。誰か、助けて……」
どうして、こんな事態になってしまったのか。三階の電器店が大規模な停電を起こした、そんなアナウンスが流れると共に耳障りなノイズが数秒間流れた。けど特に気にする様子も無い客らは、自由に行動を取っていたのだ。
仕方無く、私は躊躇い、しかし確実にそれらのモノをカートで押し引いて潰して行く。着実に正確に狙いを定め、まるで挽き肉を捏ねるかのように、ぐちゃりっと肉片が飛び散っていた。そんな行動を自身でも自分が異様なのではとも感じたが、それしか助かる術がなかったのだ。
「あははははっ、それで。停電したんだ?エレベーター、動いてるのに変だね」
しめた、残った客がエレベーターに二人乗り込んでいる。探していたそれを目当てに私は急いで駆け出す、そうして漸く乗り込んだ刹那。もう一人女性がエレベーターに乗客する、彼女の容姿は、金色の髪と青の眼。そして手足は傷だらけ、その姿は今でも目に焼き付いて離れない。
「か、鞄を貸して!」
「はっ?何言ってんのよ、私のよ。貸すわけな……」
ガブッ
「っう、不味い。噛まれた……」
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