第二章 空日未来十(ソラヒアスト)

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「神や天使が、人間に干渉する事は赦されない。その罪の重さに比べれば、我の役目は正当な行いに過ぎないと思うが?」 『人間に厄をもたらす存在は、忌み嫌われている筈。それに抗ってまで災厄に貶めたい理由は何なの……?』 「愚問か、否(いや)寧ろ神の存在が、堕に属した者に疑問を問い掛けるとはな。我を地に貶めたのは、主等であろう?正当な制裁がどうとかを言いながらに、階級だけで見下し。審判を降す愚かなる貴様等には嫌気が差した、それがヒントだ」 『貴方は、基。上級天使とも在ろう存在だった筈よ、どうして裏切ったの?』 咲夜の問いに、男は鼻で笑った様に答える。地位や名誉を剥奪とされた当初は誰も我の冤罪を信じなかったと、だから自らの手で世界を創世へと導くのだと。壊されたのならば、復讐を果たせば良い、そう吐き捨てるように言って彼は姿を消した。哀れな天使、神話にはそんな風に描かれていた、其を知る咲夜は訝しげに顔をしかめる。 神々に冤罪をきせられた、だからと言って関係の無い人間達や地上の生物を復讐の対象にする必要なんて無いと彼女は思ったのだろう。しかし、実際には私達人間には理解の領域を超越とした森羅万象のような会話なのだ、理解なんて言葉には到底収まりきらない。 解(げ)せぬ光景を目の当たりに、私は未来十くんの方を見遣ったままに沈黙としていた。ただ、先程に魅せた咲夜の不穏な顔色は明らかに何かを感じ取ったような様子だった。恐らくは、全て先の事を悟っていたのだろう。そして、其れは私達人間に多く関係するのだ。 この時は、まだ、世界が平穏でいられると安易に思い込んでいた。あの日の災厄が消えた事で、私は安心しきっていたのかも知れない、そして、消えない厄と戦うのは自分では無いのだと勘違いをしてしまっていた厳かさに自らは後に後悔を抱く事もあの瞬間は気付く事さえ出来なかった。 誰かが言った言葉、もし。過去を変えられたら、その意味を安易に思うのは人間なら誰しも一度は考える、だから他人に代わりに厄が起こるなんて思ってもみなかったのかも知れない。 「佐取(サトリ)どうして、約束したじゃん。明日は僕と遊ぼうって、何で死んじゃったんだよ……」 悲壮に満ちた声が聞こえて、私はふと河川敷の方を振り返る。其所には紺色の私服に身を包む少女が立ち尽くしたままに涙を流していた、其に気付き咲夜は彼女の前に姿を現す。
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