3人が本棚に入れています
本棚に追加
「ねえ、りう。貴女は誰に造られたの?」
「その話は、王様の前ではしない方が良い。壊されるから」
そう吐き捨て、彼女は視線を足場に向ける。そこには積み上げられた手足のもがれた瓦礫と化した人形の玩具があった、幾つもいくつも、無惨にも破壊されているのかそれらは虚ろな眼を開いたままに其所に散らばっている。
その言葉に不安を覚えつつも、私は足下に転がっていたオモチャにそっと視線を向けた。腕が外れたフランス人形、それに眼が片方無いそれらはやはり不気味な雰囲気を放っている。ダイヤに着飾られた少女のドールは、悲惨な事になっていた。
厳つい体格の人形、更には二人寄り添う人。そう、これらは全部元は人間だったのだ、その証拠に床に血痕が僅かに遺されていた。明らかに殺人現場だ、思わず眼を反らそうと自身の心が読まれないよう黙ったままに俯く。けど、足だけはりうに着いて行っている。
「りう、もしかして。ここに在るのって人間だったの?」
「……そうよ、この玩具は王に逆らった愚かな人達。滑稽でしょう?」
「……」
狂ってる、そう考える度に必死に私は感情を圧し殺していた。そして、変わり果てた人間の無惨な惨状を前にしても無理矢理にでも恐怖を露にしてはならないと察してしまう。従えば、自分だけは助かるのだから、其れにあの王と呼ばれる青年は見覚えがある。
「っ、りう。この辺りなら平気だよね?さっきの話、答えて。あの人は何が目的なの……」
「物を粗末に扱う人間に、制裁を下しているに過ぎないわ。私達の様な感情を持つ機械は珍しいけどね、私を造ったのは王様自身なのよ」
意外にも、安易に質問に答えて行く彼女。りうはやはり、この状況を多少なりとも気にしているのだろう、だけど逆らえないのだ。主人(あるじ)に従うのは従者(メイド)の役目なのだから。けど、なら何故彼はりうを毛嫌っているのか。
益々謎は深まるばかりだ、そんな風に思った矢先。此方に接近して来る人物の足音が広い通路に響いた、刹那、彼女は咄嗟に下がってと低音量の声で囁く。突拍子にもない出来事に驚きながらも、恐る恐るその場に身を伏せた。
「……人間?何故こんな所に、まぁ良い。そこの吸血鬼、仲間の敵はとらせて貰う。悪く思うなよ?」
不敵に笑みを交え、少年が武器を構えて銃口向けた。だが、一切焦る様子も見せずに彼女は不穏な言葉を呟く、消えなさいと。
最初のコメントを投稿しよう!