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「今回の主役は、陽菜さんにお願いします」
顧問のその声に部屋は歓声と拍手に包まれる。陽菜が立ち上がり、一礼する。その何気ない動作でさえ、絵になる。彼女はそれぐらいの華を持っている。
そして、次々と配役が発表されていく。喜ぶ者もいれば、落胆する者もいる。演劇部ではお馴染みの光景だ。
「最後に、今回は紗月さんに演出に入ってもらいます。私も指導はしていくけど、基本は紗月さんに一任する形になります。じゃあ、今日はこれで解散」
一気に部員の話し声が解放され、途端に音で満ちていく。
「紗月、演出家なんてすごい。さすが」
「ありがとう。そっちも主役おめでとう。まあ、この話のヒロインは陽菜しかないと思ってたけどね」
「本当に? 嬉しいこと言ってくれるね。あ、片付け終わった? 一緒に帰ろう」
「うん。お待たせ」
「ねえ、たい焼き食べていかない?」
「いいね。今は白あんの気分」
「私はカスタードかな」
二人は並んで夕焼けの中へと歩き出す。笑い声のユニゾンが響いている。
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