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そんな頃―――
怯えるように学校から逃げていた紅林は何者かから逃げるようにボロボロになりながら、走り続けた。
だがしかし、彼女を追う者はいない。
彼女の頭の中はグチャグチャだった。
トリカブトの根をすり潰して、ろ過させた特製の猛毒液を入れたはずの注射器には何も入っていなかった。
「(嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ…)」
一度もこんなミスを犯したことがなかった彼女にとって、信じがたいものだった。
学校を去る際、注射器を打ったはずの男子高校生は“生きていた”。
返すように打たれた自身が死んでいないので当然である。
そして自身のミスを見せつけた青年に酷く怯えた。
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