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淡い日光が心地よい。
秋の景色は言葉にならないほどの感動を僕に与える。
学校行事でピックニック広場に来た遠足。
高校生よりも校長である僕が一番楽しんでるかもしれない。
僕の母校だが昔はこの学校行事はなかった。
絵の具で塗ったような見事なたくさんの紅葉の木は僕を奥の道へ運ばせる。
どんどんと奧へ行く。
この奥には何があるのやろうか。
この好奇心はもう60歳の僕を止められない。
奥へ行く。
奥へ、奥へ、奥へ……。
どんどん歩くペースが速くなる。
奥へ、奥へ、奥へ……。
もう高校生たちの遊んでいる声が聞こえないところまで進んでいる。
遠くにゴールの光が見える。
僕のドキドキが止まらない。
やっとたどり着きここで手を膝にのせて深呼吸。
『スー、ハー、スー、ハー、スー、ハー、スー、ハー……』
今から見る絶景が楽しみでどうしようもできん。
そうだ写真ば記念に撮ろうかね。
期待感が溢れ出ているときに波の音が聞こえてくる。
ザブーン、ザブーン、ザブーン……。
顔を上げてみると、白浜の海があった。
-ーどこまでも透き通っている青い海。
--青く霞んで見える空。
--空を彩るかのような白い雲。
確かにそこにはきれいなの景色がある。
だけどなぜだろう、心にグッとこない。
絶景? いや、なんか違う。
僕が知っとる海の景色とは違っとる。
心の中は物足りなさでかき乱れていく。
裏切られた、僕はあの紅葉の木に……。
写真も撮る気分にならない。
僕は行きよりも遅いペースで広場に戻った。
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