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荒地の花壇
佐久に呼ばれて体育館裏手にある通称「荒地の花壇」にいったのは昼休みがはじまっての頃だった。
荒地の花壇には黄色や赤の花々が咲いていたが、その周辺のレンガは歪み、地面が凸凹している。体育館の壁にはツタが絡まり、むき出しのコンクリートのうえを大きなクモがつかつか歩いていた。
「ごめん、待った」
佐久がやってきた。彼は中学に入ってすぐに仲良くなった。その仲は三年の今でも続いている。足と手が長くてモデルのような体型をしている佐久は、学校中の女子から追い掛け回されている。
人気者の彼といると私は少し鼻高々になる。だけどいっしょにいるところを見られると「あんたキモち悪いんだから彼と一緒にいないで」なんていわれるので学校で彼と話があるときは「荒地の花壇」で待ち合わせている。
「どうした」
荒地の花壇に腰を掛けながら空を見上げた。ここは箱庭みたいにぽっかりと四角く空が切り取れる場所で、私はここから見る雲の流れが好きだ。
「好きな人ができたんだ」
「え?」
彼の口から異性の話ができたのはこれがはじめてだった。
「だれだれ? 同じクラス?」
彼が首を振る。
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