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お茶の時間
彼の朝は、仕事場でのお茶の時間から始まる。
窓を開けて換気をし、ポットを火にかける。お湯が沸くまでの時間を今日の予定を立てる時間にあて、気になる事をあげていく。そうするうちにポットから湯気が上がり、彼は立ち上がって火を止めてポットを持ったままソファーセットへと場所を移した。
そこにはお茶セットが整っている。お気に入りのティーポットには今日の茶葉がすでに入っている。揃いのカップに、お菓子も少し。
腰を下ろしてティーポットにお湯を注ぎ込むと、少し濃いオレンジ色が白い磁器に映えた。
「今日のお茶はなにかな、エリオット?」
戸口でする軽やかで甘い声に顔を上げると、エリオットはにっこりと微笑んだ。
「ジョルジですよ、オスカル」
扉を閉めて入ってきた彼は、当然のようにソファーセットに腰を下ろす。
エリオットもカップに淹れたばかりの紅茶を注ぎ、彼の前に置いた。揃えのセットは、元より二人分用意されている。
「いい香りだね。今日のお菓子は…ジャムクッキーか」
「えぇ。昨日買ってきたばかりなんですよ。一つ食べて気に入りました」
形のいい細い指がクッキーを一つつまみ、そのまま口に放り込む。
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