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「私が、パーティーの医務室管理ですか?」
思ってもみない依頼に、エリオットは目を丸くする。
目の前には城の医事課を預かるベテラン医師とオスカルがいる。ベテラン医師は明らかに疲れ切っていた。
「ごめんね、急な話で。城の中も大変な事になっててさ」
「申し訳ありません、エリオット殿。わしらも手を尽くしてはいるのですが、城お抱えの医師も数名倒れてしまい、奥院ではメイドや従者、果てには執事までもが体調を崩しまして」
「大変ですね。それで、手が足りなくなってしまったのですね」
「不甲斐ない」と項垂れる彼を見ると気の毒になる。この人もきっと疲れているに違いない。
「パーティーというと、年末の?」
「そっ、一週間後。城の中はこれの準備で大忙しなんだ」
オスカルも疲れた顔でそう言う。近衛府も風邪でダウンしている者が多い。彼の負担も多くなっているだろう。
「お願いできませんか、エリオット殿」
「……わかりました」
正直あまり自信がない。城の、しかもパーティーの医師なんて経験がない。
相手は荒事ができる騎士ではなく、注文の多い貴族達。そんな人を相手にいつもの調子で接すればクレームがつく。余計なトラブルを招いてしまったら。
けれど、大変な思いをしているオスカルを助けてあげたい。陰ながらでも彼の助けになれるのなら、そうしたいのが本心だ。
エリオットが引き受けた事で、ベテラン医師は手をガシッと掴み、そこに額を当てる勢いで頭を下げて何度も「有り難うございます」と繰り返していた。
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