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現れたのは騎兵府のランバート。最近入った隊員だが、ファウストのお気に入りだ。目鼻立ちのいい綺麗な顔をした、美しい金髪の青年だ。
彼は首を横に振って背後を気にしている。声が徐々に近づいてきていた。
「大丈夫だから、仕事するよ」
「大丈夫じゃないから強制連行してるんじゃないですか!」
「暴れないでください!」
一人の声は知っている。ランバートの上司にあたる、第二師団のウェインだ。小柄で元気がよく、とてもハキハキした青年だ。
「ウェイン?」
「多分風邪です」
肩を落として溜息をついたランバートのすぐ横に、おそらく第二師団の他のメンバーが顔を出した。そして、その両脇を抱えられるようにウェインがジタジタ暴れている。
顔がほんのりと赤く、暴れていてもあまり力が入っていない様子。声も多少変わっている。咳はないが、発熱を疑うには十分だ。
「大丈夫だから、離してってば! 僕まで倒れたら誰が仕事するのさ」
そんな事を言うウェインを、エリオットはキッと睨み付ける。
立ち上がり、少し早足に近づいていくと、二人がかりで抱えていたウェインの体を肩に担ぎ上げ、暴れる間も与えずにベッドに下ろして肩を押さえつけた。
「健康なら、私くらい簡単に出し抜けるでしょ? さぁ、どうぞ」
「いや、エリオット様相手だと健康でも難しいです…」
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