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味わうように難しい顔でしばらく噛みしめていたオスカルの表情が、次第にほころんでくるのを見るとホッとする。エリオットも安心して、クッキーを摘まみお茶を飲んだ。
「あまり甘くないんだね。ジャムは苺かな? 酸味がいいバランス」
「お茶も甘めですから、お菓子は少し控え目にしました」
「逆でしょ? このお菓子に合うように、お茶を選んだんでしょ」
ニヤリと笑い、下から見上げる瞳が鋭く楽しげな光を帯びる。その青い瞳に見られて、エリオットはドキッとした。
いつも、彼の前では隠し事ができない。甘く軽い視線の中に鋭さがあって、心の奥まで見られているような気がしてドキドキする。やましい気持ちのある身としては、そんなことまで知られてしまっていそうで怖い。
「エリオットは、甘いお菓子が好きだよね」
カップの縁を軽く指でなぞりながら、オスカルが笑う。楽しそうにする彼は、また一つクッキーを摘まんだ。
「貴方は意外と甘い物が苦手ですよね」
クッキーをお茶で流し込んでいたオスカルの片目が、ほんの僅か大きくなる。次には困ったような笑みが返ってきて、小さく頷いた。
「甘すぎるのはね。チョコにチョコをコテコテに重ねた物とか、カスタードクリームに生クリームとかさ。果物もそのままで美味しいのに、蜜とか塗りたくったり。そういうのは苦手」
「パティシエが聞いたら泣きますね」
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