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エリオットは素直に首を横に振った。そんな日を想像したことなんてない。だって、できなかった。現実味がなかった。
「僕はね、ずっと考えてたんだよ。いつかエリオットを抱きたいって、思ってた」
「え?」
「好きなんだから、当然でしょ? 好きな人の肌に触れて、気持ちよくなりたいって思うのは普通だよ」
「そういう、ものですか?」
「違うの?」
問われて、途端に申し訳なくなる。
そもそもオスカルとこんな関係になる日が来るなんて、考えてもいなかった。だから具体的な事なんて、何一つ想像していなかった。
溜息をつかれる。悪い事をしたような気がして、たまらない。けれど、困ったような顔で見下ろされて、優しいキスをされて、エリオットはそれに素直に甘えた。
「エリオットは、僕とどんな事をしたいの?」
「え?」
「それも、想像してなかった?」
悲しそうな笑みを見るのは辛い。彼が悪いんじゃなくて、全てを諦めていたエリオットが悪い。申し訳なくて、だからほんの少しの望みを口にした。
「できれば…」
「できれば?」
「一緒にお茶のお菓子を選んだり、揃いのカップを選んだり。そんな事ができればいいなって、思う事はありますが」
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