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けれど、彼女の家名はどこかで聞いたことがある。疑問に思って首を傾げていると、隣のオスカルが察してくれたのか、答えを放り込んでくれた。
「今の内務大臣のご息女だよ」
「え? えぇ!」
驚いて声を上げると、フィオナ嬢が可笑しそうに笑う。
「そうとは知らず、とんだ無礼を」
「無礼だなんてとんでもない」
「あの、ところでなぜ私を?」
普通、騎士団の人間は城の者とは関わらない。関わりを持つのは近衛府だけだ。なのに、わざわざ近衛府を使って呼び出すなんて。
彼女は穏やかに笑う。そしてエリオットの前に箱を置いた。
「どうしても、直接お礼を言いたくて。それで、父上にもお願いして無理を言いました。よろしければこれを。教えていただいたお店のものですわ」
「そんな、当然のことをしたまででお礼だなんて」
変に気を使わせてしまっただろうか。申し訳なくなって慌ててしまう。けれど彼女はコロコロと笑う。とても楽しそうに。
「実は翌日、あの時の方が謝りにいらっしゃいましたの」
「あの時のって…」
つまり、乱暴を働いた男だろうか。
「話してみたら、とても腰の低い真面目な方でしたわ。とても上がってしまって、気を紛らわせるのにお酒を飲み過ぎてしまったそうです。本当はグラス一杯でも酔ってしまうほど弱いそうですわ」
「そうですか」
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