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でもそれは、酒乱の気があるってことだろう。ストレスでもあるのだろうか。
「お酒を控えるということですわ。悪い人ではないようですので」
「そうでしたか」
「貴方にも謝りに行くと言っていましたが、私が代わりに。私もお礼を言いたかったので」
そこまで言うと、不意にノックの音がする。初老の男性が畏まって入ってきて、彼女に「そろそろお時間です」と伝えた。
立ち上がった彼女は改めて礼をする。そしてとても真剣な目でエリオットとオスカルを見た。
「ご苦労も多く、危険なお仕事だと思いますが、どうかご自愛ください。皆様が息災であることを、心から願います」
「有り難うございます」
エリオットも一礼し、彼女は手を振って出て行った。
それを見送り、ドッとソファーに腰を下ろす。少し緊張してしまった。
ふと、彼女の置いて行った箱に目がとまった。手を伸ばして開けてみると、個包装になったクッキーが数種類入っていた。
「彼女に乱暴しようとした男は、内務大臣補佐の息子だったんだよ」
「え?」
隣に腰を下ろしたオスカルが、可笑しそうに笑って言う。
けれど事態はそんなに愉快なものじゃない。つまり、上司の娘を襲おうとしたわけだ。当然父親の立場に響くだろう。
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