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「まぁ、当然大臣は怒ったんだけどね。彼女が相手の男と話して、父親を取りなしたらしい。酒の席での事で、大事にはならなかったのだからと。可愛い娘の取りなしに、大臣も従ったわけ」
「では、咎はなしと?」
「そういうこと。まぁ、酒を控える旨の誓約書は書いたみたいだけれどね」
聡明そうな女性だったが、慈悲深くもあるのだろう。何より、騎士団の人間にあのような言葉をかけてくれる人は少ない。慣れない感じで、少し戸惑う。
「驚いた?」
「まぁ。なんだか、慣れなくて。こんな風に言ってくれる人もいないので」
「君に気があるのかな」
なんだかとても子供っぽい声で言うオスカルに驚いて見る。
面白くない顔をしている彼を見ると、ちょっと可笑しくて笑った。焼きもちを焼いているのだと分かる様子が、嬉しいようなムズムズした気持ちにさせてくれる。
もらったクッキーを手にする。エリオットは柔らかく笑った。
「今夜、私の部屋にきませんか?」
「え?」
「せっかく、クッキーを貰いましたから。一緒に、お茶でもどうですか?」
微笑んで言うと、オスカルの青い瞳がほんの僅か丸く開く。そして次には柔らかな笑顔が浮かんだ。
「勿論、お邪魔するよ」
甘く甘く笑う彼を見て、エリオットもこの上なく嬉しそうに笑う。これからも続く二人の時間を、感じる事ができて。
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