お茶の時間

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 今では医学を学びたいと言う隊員も増え、この医療府も賑やかになった。その陰に、少なからずオスカルの力があるのは否めない。  そういう恩は感じてる。けれど個人的には、あまり得意な相手とはいえなかった。  何を考えているのか分からない。悪戯ばかりで人を困らせて楽しそうにする彼を見ると、迷惑と感じる事も多かった。自分はそこに巻き込まれたくないと。  けれど、彼に悪戯をされて嫌がる人は不思議といない。その場では怒っても、すぐに許してしまっている。大抵が「まぁ、いつもの事だ」という反応が返ってきて終わってしまう。  疑問だった。けれどその答えは医療府を立ち上げて分かった。  彼が悪戯を仕掛ける時は、その人が弱っている時だった。気持ちが落ち込んだ人だったり、入隊したばかりで不安を感じている人だったり。  彼なりの、「力を抜いて」というメッセージなんだと、後になって気づいた。  目が離せなくなった。そうしたら、見えてきた物が多くなった。  部下を厳しく統率しながらも、よく見ている事が分かった。悩んでいる隊員には余計に声をかけている。時には悪戯をして力を抜かせたり、悩みを聞いたり。  彼なりのスキンシップが、近衛府を円滑にしている。とても器用に立ち回る彼を尊敬するようになった。そうしたら、胸の奥が時々落ち着かなくなった。     
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