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「ところで、なんで町おこしを?」
とやはり呑みたいのか、屋台の壁に貼られた上酒一合の文字を見ながら、冬馬が訊いてきた。
「ちょっと離れたところに巨大ショッピングモールができちゃって。
商店街がちょっと苦しくなっちゃいまして」
「で、なんで、江戸の街並み作ったんだ。
此処、東京都じゃないじゃないか」
「いや、此処、大江戸町って地名なんですよ」
と琴音は笑う。
「……それだけでか。
此処は、お調子者の集まりだな」
と渋い顔で言う冬馬に、
「支社長はいつもご機嫌ななめですね」
と言うと、
「俺は本社からこんなところまで、気持ちよく吹っ飛ばされてきた莫迦旦那だからな」
と言う。
「誰が支社長のことを莫迦旦那だなんて……」
「お前だろうよ……」
いや、あれは衣装が、たまたまあったってだけじゃないですか、と琴音は苦笑いする。
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