761人が本棚に入れています
本棚に追加
飴売りだった八百屋のおじさんから飴を買うと、お礼にカラクリ人形とともに、軽く踊ってくれた。
飴売りとは、そういうものらしい。
「あの調子っぱずれの変な音律が頭に焼きついて離れんぞ……」
とおじさんから買ったカラフルな縞模様の飴を舐めながら、横を歩く冬馬が言う。
琴音は、
……これ、おばあちゃんとこで普通に売ってる江戸飴だよな。
ぼったくられた……、と思いながらも、鮮やかな色のそれを眺める。
「財布にはやさしくない町ですよね」
と呟くと、
「お前らがやってんだろうが」
と冬馬が笑った。
あ、笑った……と思い、琴音はその横顔を見た。
会社では気難しげな顔しか見たことがないからだ。
まあ、そりゃそうだなよ、と思いながら、ぽい、と飴を口に放ると、普通に飴の味がした。
最初のコメントを投稿しよう!