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お姫様の格好をした町会長の孫娘が乗った駕籠が道に置かれる。
その兄、健太の扮する草履取りが舞を舞いながら、草履を駕籠の前に投げた。
ぴたり、と草履は姫の駕籠の前に落ち、おおー、と観客から、歓声と拍手が起こる。
「ケンちゃん、めっちゃ練習したんですよー」
と琴音が言うと、
「あれ、姫の頭に乗ったら、おおごとだな」
と冬馬は言ってくる。
「それもまた、ウケていいと思いますが」
と言うと、そうかそうか、と冬馬は適当な返事を返してきた。
……つまらないのだろうかな。
いや、だったら、帰ればいいのに、何故、いつまでも此処に居るんだろうな? と思いながら、琴音は横に立つ冬馬を見上げていた。
天気が良すぎるせいか、時折、眩しそうに何度も目をしばたたかせながら、立ち止まり、行列を眺めている。
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