いつもご機嫌ななめですね

9/13
前へ
/32ページ
次へ
   お姫様の格好をした町会長の孫娘が乗った駕籠(かご)が道に置かれる。  その兄、健太の(ふん)する草履取りが舞を舞いながら、草履を駕籠の前に投げた。  ぴたり、と草履は姫の駕籠の前に落ち、おおー、と観客から、歓声と拍手が起こる。 「ケンちゃん、めっちゃ練習したんですよー」 と琴音が言うと、 「あれ、姫の頭に乗ったら、おおごとだな」 と冬馬は言ってくる。 「それもまた、ウケていいと思いますが」 と言うと、そうかそうか、と冬馬は適当な返事を返してきた。  ……つまらないのだろうかな。  いや、だったら、帰ればいいのに、何故、いつまでも此処に居るんだろうな? と思いながら、琴音は横に立つ冬馬を見上げていた。  天気が良すぎるせいか、時折、眩しそうに何度も目をしばたたかせながら、立ち止まり、行列を眺めている。
/32ページ

最初のコメントを投稿しよう!

761人が本棚に入れています
本棚に追加