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「……会社で俺は不機嫌か」
そう訊きながら、冬馬は思っていた。
何故、こんなことを一介の女子社員に。
こんな弱みを見せるようなこと――。
案の定、琴音は、
「はい」
とあっさり頷いてくる。
やはり笑顔で毒舌……。
「いや……もうちょっと労わってもくれていいんだぞ」
行列が通り過ぎたあと。
見ると、向かいにある、水茶屋の幟が立った甘味処では、店の前に並べられた長椅子に腰掛けた町娘たちが、明らかにチョコレートパフェな感じのものを食べている。
なんと適当な。
だが、楽しそうだ。
世の中って、こんな、ざっくりでいいんだな、ざっくりで。
こんな異世界のような場所だから、素直になれたのかもしれないな、とふと思う。
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