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冬馬は、去り際、もう一度、港町に突如現れた江戸の町を振り返りながら、
「……男はいつでも、自信満々で、揺るぎない感じじゃないと部下はついて来ないと思っていたが。
たまにはゆるい感じもいいのかもな」
と呟く。
「そうですよ。
私なんか、いつも強い人より、ちょっと元気なかったりする人の方がキュンと来るんですけど」
と言いかけた琴音は上を向いて少し考え、
「でも、支社長には、全然来ませんね~」
と言ってくる。
なにっ? と思っていると、琴音は、
「だって、支社長、不機嫌だけど、まだ目はギラギラしてますから」
そんな意外なことを言ってきた。
自分が思っている自分と、人が見ている自分はたぶん違っていて。
意外と人が見ている方が真実なのかなと、このとき、ちょっと思った。
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