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「翔琉君も休んではどうですか?……線香なら、私が見ておきますよ」
管理人の憐れむような声がしたのは午前2時を回った時だった。
翔琉は、管理人が自分の名前を知っていることに不快な気持ちを覚えた。母親が寝物語に語って聞かせているのだろうと思うからだ。
無言でうなずくと立ち上がり、集会場を後にした。
「なんだ。礼も言わずに……」
管理人は翔琉が消えた出口に向かって吐き捨てるように言った。
翔琉はふわふわとエレベーターに乗り込み、7階で降りる。自宅のリビングには明かりがついていたが、母親は寝室のベッドでぐっすりと寝ていた。そこには悲しみも不安もなく、平穏な日常が横たわっているように見えた。
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