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食卓テーブルからは、譲司の存在などすっかり消えていた。これまで、そこに譲司のいない日常はなかったのだけれど、実際にいなくなってもトモエと翔琉の日常が変わることはなかった。
普段通りに翔琉はバスに乗り、高校に向かう。
学校に近づくにつれてバスの中は制服姿の高校生でぎゅうぎゅうになり、高校前のバス停で吐きだされる。
バスを降りた生徒たちの一部は塊になって声を上げ、あるいは一人一人が黙々と校門に向かう。あと少しで翔琉が校門をくぐろうというところでスマホが鳴った。
『翔琉、すぐに戻っていらっしゃい』
聞こえたのは、母親の声だった。
「もう、学校だよ」
『学校はいいから。お父さんが死んだのよ』
友達に学校を休む旨を伝え、急いで自宅へ引き返す。
翔琉の非日常が始まった瞬間だった。
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