恋とカメラと百舌鳥八幡駅

1/10
2人が本棚に入れています
本棚に追加
/10ページ

恋とカメラと百舌鳥八幡駅

 朝の日差しを浴びながら、小走りで中百舌鳥駅南口を目指す。寝坊してしまったので集合時間の九時十五分にはぎりぎりだ。ろくなメイクもできずほぼすっぴんの状態だけどしかたない。遅刻すると先輩に怒られるので、なんとか間に合わせないと。  あまり体力のある方ではないので息を切らせながらだったが、どうにか時間ピッタリに駅に着くと、先輩の渋い顔が目に入ってきた。 「なんでこんなぎりぎりに来るのだね。いつも余裕をもって行動しろと言ってるだろう香苗(かなえ)君。特に撮影の時は少しの遅れで台無しになることもあるんだぞ」  遅刻はしなかったが結局叱られてしまった。ただ、先輩の言ってることは正しいし、時間に遅れそうになることも初めてではないので反論することもできない。 「すいません、スマホのアラームをいつの間にか止めてしまってて……」 「……まあいい、今日は間に合ったのだからな。ほら行くぞ」  私の申し訳なさそうな表情を見て言い過ぎたとでも思ったのか、先輩はあっさり小言をやめてホームへ向かう階段を上り始めた。いつもならもう少し続くはずなのだが、今日はなんだか珍しい。まあ、とにかく先輩の後へとおとなしくついていこう。     
/10ページ

最初のコメントを投稿しよう!