現実

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あ、何かスイッチ入ったなと二人はすぐに察した。 そんな二人に気づいているのかいないのか所長は話を続ける。 「お二人はアルビノをご存知かな?あれは色素合成に必要なメラニンの遺伝子を欠損し、先天的にメラニンが欠乏していることで通常より色素が薄くなる遺伝子疾患を持つ個体を差す。私は異形達が似たような種なのではないかと推測し、遺伝子について研究した。そう言えば、お二人は異形の起源をご存知かな?」 「起源?」 「異形が何故生まれるのか、いつどこで最初の異形が発見されたのかなどだ」 二人は数度瞬きを繰り返した。 異形とは忌むべき存在であり、自然と発生する敵。何故生まれるのかという問いに関しては虫や鳥は何故生まれるのか?と同等の考えもしない問いであった。異形は人間と人間の間にも生まれる奇異なる存在。確かに言われてみれば気になる内容だ。 二人の反応から察した所長は小さく笑って口を開く。 「彼らはいわゆる、先祖返りだ」 「先祖返り…?」 「人間の進化が猿からだというのは覚えがあるだろう?あれと同じように我々の祖先は元々獣に近かったたと言われている。虫、獣、魚。この全てが人型へと変化を遂げ、そして次第に退化していき、角も牙も爪も鱗も針も羽も、何も持たない我々人間が生まれ始めた。つまり、全ての人間が等しく異形と呼んでいる彼らの遺伝子を保持しているのだよ。この事実は一部の人間しか知りえないものだ。何故だか分かるかい?」
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