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進んだ先で二人は目を見開くことになった。
「ギャアアアア!!!」
耳を劈(つんざ)く凄まじい悲鳴。その声の主は額からほんの少し角が生えている異形。彼は電気椅子に拘束され、電流を流し続けられていた。それを研究員達はガラス越しに無表情で眺めている。
「これ…は…」
動揺する二人におかまいなく、所長はマイクを手にして叫ぶ。
「さぁさぁ!君の力ならそんな電気椅子なんて即座に壊せるはずだろう!?ほらほら!頑張らないと死んじゃうよ!?」
笑みさえ孕んだ狂気に二人はゾッとした。
やがて悲鳴が止み、カクンとうなだれるように異形の首が落ちた。
「なんだ…気絶したか。つまらん。だがこれで異形は痛みによって力を使うことが出来ないということが分かったな!」
嬉しそうに書類にメモを始める姿に二人はただただ立ち尽くした。そのあとどんな会話をしたか覚えていない。だが、見せられるもの見せられるものが全て非人道的で、それを許しているのが今のこの世界の法律なのだと理解し、震えた。
声をあげたい思いがあったが、今ここと騒ぎを起こせば『患趣』は組織として立ち行かなくなる。それを理解しているからこそ、二人は見て見ぬふりと貫くしかなかった。
現実を、自分達がしてきたことを理解した。
この世界の闇を理解した。
知っていたつもりで全く理解できていなかったその現実。
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