てくてくさんの親指

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 ある高校生――仮にAさんとするね――で、そのAさんが、教室で「てくてくさんの親指」の噂を聞いて、欲しくなったのかな、買いに行ったの。Aさんの友達が――こっちはBさんね――売ってる人のこと知ってるって言うから連れて行ってもらったの。  その人はホームレスみたいな人だったんだけど、なんて言うのかな、小奇麗っていうか、こざっぱりっていうか。とにかく、普通のホームレスっぽくなかったんだよ。肌も浅黒くて、日本人ぽくなかった。  でも、いざその人と話してみると、結構フレンドリーで話しやすい人だったんだって。見てみると、他にも商品があって、全部手作りの小物なんだけど結構可愛いのもあって、だから余計「てくてくさんの親指」の異質さが際立ってた。  「ホンモノ」みたい。「ホンモノ」の足の親指。そんな感じがしたの。ホームレスのおじさんは、木の皮を上手いことやると本当の人の皮みたいになるんだって笑ってたけど、手触りとか、ちょっと湿った感じとか、「ホンモノ」にしか感じられなかった。  とにかく、買って帰ろうとした時、おじさんはAさんにこう言った。  「それを持ってることを忘れるなよ」  それから数日は何事もなく過ぎていったんだけど、Aさんの身の回りでおかしなことが起き始めたの。初めは隣のクラスの誰かが誘拐されたとか、上級生の誰かが行方不明になったとか、物騒だけどAさんには関係ない話。でも、次第にAさん自身にも変なことが起き始めた。     
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