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初めは、好きな人に告白されて付き合い始めて、「てくてくさんの親指」のおかげだって、そう思ってたんだけど、足の親指みたいなストラップつけてる女子ってキモくない?せっかく結ばれたのに嫌われたくないから、次第に隠すようになったの。かばんに付けてたのを携帯に、携帯に付けてたのをお財布に。ついにお財布に付けてたのを外してかばんの中にしまってしまう。
そんなことをしてると、生活がどんどんおかしくなっていったの。ストラップを隠し始めたあたりからどこからともなく、「ぺたぺた」って足音が聞こえてくる気がする。裸足でゆっくり歩いてる時みたいな、「ぺたぺた」って音。変な足音の人もいたものだなって最初は思ってた。
でも、次第に視界の端に、曲がり角の影に、振り返った時に、ふとした時に裸足の足が見えるようになってきたの。健康法の一種、そういう趣味の人。いろいろ考えて気にしないようにしてた。でも、異変はどんどんエスカレートしていく。
視線を感じるの。ううん、視線なんて普通のものじゃなくて、気持ち悪い悪寒。わけのわからない背筋の凍るような恐怖。理由なんてわからない。ちゃんとストラップは持ってるし、合わない休日は目に見えるところにおいてる。そんなこんなで数日が過ぎた。
恐怖が確信に変わる夜がやってきた。
Aさんの家は二階建ての一軒家で、Aさんの部屋は二階にあるんだけど、気の迷いだったのかな、外をふと見てしまう。
下半身だけの裸足の足が家の前をちょうど通り過ぎるところだったのね。
「ぺたぺた」といういつか聞いた足音が夜の街に響いてた。
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