花売りの少女

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冷たい夜だった。一段と寒い夜になると、今朝テレビで報道していたのを思い出す。 今日もお花は一本も売れない。一本も売れないまま家に帰っても、お父さんとお母さんはいつも私を笑顔で迎えてくれる。寒かったろう?お疲れ様、いま温かいスープを入れてあげるからね。そう言って、私の身体も心も、温かくしてくれる。でも私は、それに後ろめたさを感じずにはいられない。お花を一本も売れなかったのに。お金を一円も稼げなかったのに。いつも花を売りに夜の町へ出て行って、一本も売らずに帰ってくる私にくれる、温かいスープ。それは二人が自分たちの食費を削って、そのお金で材料を買って作ってくれたものだと私は知っていた。お父さんとお母さんは、毎日パンと水しか口にしていないことも知っていた。もっとも、二人は隠していたようだけれど。 罵られたほうがまだよかった。なんで一本も売らなかったんだと、怒鳴られたほうがよかった。お父さんとお母さんは、心から私を労ってくれる。それはとても嬉しい。けれど自分はそんな二人に何もできていない。
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