173人が本棚に入れています
本棚に追加
唇が重なり合うと、更に満たされていった。ゼアンはようやく、ルスタに対する罪悪感を忘れて、ただこの時間を楽しむことが出来た。ルスタに愛しまれ、そして自分も彼を愛することが出来た。
そして、ゼアンの体が慣れてきた頃合いに、ルスタは様子を見ながら腰を動かしてくる。見知らぬ境地に達しながらも、ゼアンは幸せを全身に受ける。
そうして、夜が更けていった。
***
眠りは浅かった。夢も見ず、ただ疲れて寝落ちてしまった。途中でルスタが自分の体に触れていることに気付いたけれど、目は開けなかった。丁寧に体を拭かれ、最後には瞼にキスを落としてルスタもゼアンの隣で眠りについた。
まだ夜が明けきらない頃に目が覚めて、ぼんやりと瞼を開けた。何もない天井をしばらく見つめてから、横を向く。まだ、ルスタは眠っていた。
起こさないよう気をつけながら寝返りを打ち、寝顔を眺めた。ルスタも疲れているのだろうか。いつも先に目を覚ますのに、今日はまだ起きる様子がない。
じっと見つめたあと、そろそろと手を動かして、綺麗な顔に触れた。額は狭く、目立ちはくっきりとしている。唇は薄いけれど、柔らかい。口づけをするときは熱を帯びたように熱く感じる。少し痩せた頬に手のひらを当て、滑らかな肌の感触を楽しんだ。
ほんの少し、顔が顰められ、ゆっくりとルスタの目が開かれる。
「……何をしている?」
起きたばかりで、まだハッキリとしていない擦れた声。小さく囁かれた言葉に、ゼアンは微笑んだ。
「綺麗な顔だなと思いまして」
鋭い瞳も、今となっては好きかもしれない。長い髪を撫でて、顎に唇を当てた。それから喉、首筋、肩へと唇を滑らせる。
腕を探り、手を重ねた。指を絡ませると、きゅっと優しく握り締められる。
「世辞がうまいな」
「本当にそう思ってるんですよ。あなたは……とても綺麗だ」
手を繋いでいない方の腕が動いて、ルスタはゼアンの頭の上に肘をついた。
「君はとても愛おしい」
頭のてっぺんにキスをする仕草が、その気持ちを物語っているようだった。とても大切に、ゼアンを愛しんでくれている。
言いたいことが、胸の奥から溢れてきて、喉に詰まった。話し出せば泣いてしまいそうで、ゼアンは唇を噛み、堪える。
もう決めたことだ。
最初のコメントを投稿しよう!