四 あなたのために出来ること

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「まだ外に出るには早い。それに、君が望むなら今日は一日、側にいてやってもいいぞ?」  甘えるゼアンに、甘やかすルスタの誘い。それが嬉しいけれど、素直に喜ぶことは出来ない。  そんなのは無理なのだから。  だから、意識していつも通り、捻くれた返しをする。 「嬉しい誘いですけどね、きっとあなたは忙しくなって、出掛けていきますよ。残されるくらいなら、出て行きます」 「疲れているなら、泊まればいい。出掛けても、すぐに戻ってくる」 「次の国王が、仕事よりも恋人を取ってはいけませんよ」  ぴくり、とルスタが反応するのがわかった。  次の国王はまだ、誰か決まっていない。けれど、ゼアンにはもう確信がある。次、リンダル王国の王になるのはルスタだ。  そして、玉座に座る彼の側に、ゼアンはいられない。  王になったら、ルスタはもう、ゼアンの秘密の恋人ではなくなるのだ。  ルスタが何か言い出す前に、ゼアンは体を離した。ゼアンの顔を見たルスタが、目を丸くする。 「ゼアン……?」 「あなたにお伝えすることがあります。俺の家に、あなた宛ての手紙を用意しました。顔を突き合わせて語るには、覚悟が足りなくて、そんなことをしました。だから、あとで読んでください。きっと、あなたの力になりますから」 「どういうことだ? ゼアン、君は何を……」 「俺が恋人のために出来る、精一杯のことを残しました。どうか、それを使ってください。俺のために……、あなたのために」 「使うとは、どういうことだ? 君は何を考えている?」  ルスタが肩を掴んでくる。その手をそっと外して、ゼアンは怒られるとわかっていながら、笑みを作った。そうしないと、泣き顔になる。涙は流れても、ルスタのために笑いたい。  笑って、大丈夫だと言いたいのだ。  足元をふらつかせながら、ゼアンは上着を取った。そこに隠していた短剣を握り、振り返る。
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