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次期国王を誰に決定するか本格的に話し合いが進められた今、グラエム・シャハルは追い詰められています。もしかすると、ルスタ・ハーリスが選ばれるかもしれないと焦り、私にあなたの殺害を依頼してきたのです。私があなたと頻繁に会っていることを付き人のイゴールという男が嗅ぎつけ、隙をついて刺すことも可能だろうと。
あなたを襲った剣には毒が塗ってあります。少しでも傷をつければ、痛み、苦しんで死ぬものでした。だから、片付けるとき怪我をしないよう、気をつけてください。
私はお金のために、グラエム・シャハルと手を組みました。お金のために、あなたに近づきました。
(ここで文章が一部、インクで潰されている。筆で塗り潰したようだ)
グラエム・シャハルからもらった前金は既に、使用人たちへ分配しました。もし、彼の罪を問う際にこれらを回収しなければならない場合、この屋敷を売った金で使用人たちに再度、給金を渡してもらえると助かります。彼らは何も知らず、私が勝手にしたことです。私の勝手で申し訳ありませんが、どうか、使用人たちに咎がいかないことを願います。
グラエム・シャハルからルスタ様の弱みを掴むよう、また殺害するよう依頼された契約書は別に保管してあります。グラエム・シャハルのサインもきちんと入っております。
それが証拠となり、彼が捕まることを望みます。
ルスタ様。
数々のご無礼をお詫びいたします。』
手紙の端にゼアン・ジュードというサインが残っていた。ここに書いてある契約書とルスタ殺害に関するグラエムがゼアンに保証を記した誓約書は既に見つかっていた。それを手に、ウーゴはグラエムを捕らえる手筈を整えている。
ゼアンは、グラエムを捕まえるために死を選んだのか?
ルスタは重く沈んだ気持ちで一枚目の手紙を机の上に置いた。
金が欲しくて手を組んだ。そういった話はよく聞く。元々はゼアンを疑っていたのだから、手紙を読んで、驚くことは何もなかった。ただ、証拠を残してゼアンが手紙に詫びの言葉を書いていたことが、どうしようもなくルスタの心を暗いものにした。
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