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額に手を置いて、しばらく目を閉じていた。それから、ウーゴが見つけた、もう一通の手紙を開く。
皴がついた紙には、こう記されていた。
『俺が……、言うことではないかもしれません。
けど、書き残しておかないと、このあと、あなたに伝えることが出来ないかもしれないので、書いておこうと思います。
このあとは言い訳ですからね。むかついたら、どうぞ破り捨ててください。
死ぬ前の、最後のわがままだと思って、大目に見てくれると助かります。
ルスタ様。
俺は、金のためにあなたに近づきました。恋人役っていうのも、弱みを探るのにちょうどいいと思って、引き受けました。上手くやっていけなくても、グラエムは俺に期待しているわけではないし、適当に頑張って、だめだったらだめで逃げようと考えていたんです。
それが、今夜、俺はあなたのために命を賭けようと決めました。
話が飛躍していると思いますか? 俺も、信じられない気持ちですよ。なんで、あなたのためにそこまでするんだと、自分でも驚いているんです。
けど、この前、あなたが泣いているところを見て、俺は決めたんです。この人のために、俺は出来ることをしようって。ルスタ様は俺のことからかってばかりだし、意地悪はするし、男は好きじゃないのに俺で遊ぶ。最低な奴だと思ってました。
でも、あなたは俺のことを見てくれている。
前に言ったかもしれませんが、俺はあなたにキスされるとすごく嬉しくなるんですよ。もっともっと、ルスタ様と深く繋がりたいって思う。初めてキスをしたときから、何故だか俺はあなたのことを求めていました。俺のものになってほしくて、俺だけを見ていてほしかった。
泣いているのを見て、つらくなったとき、俺は本当にルスタ様のことが好きなんだとわかりました。すべて嘘だったのに、俺の中で秘密の恋人は、本当の恋人になってしまったんです。泣いているあなたを守りたいと思った。
こんなこと言われても困ると思いますけどね。すみません。
けど、だからこそ俺は、あなたのために出来ることを考えて、グラエムからの依頼を利用しようと思いついたんです。グラエムさえいなくなれば、あなたから危険はなくなるでしょう? そして、あなたを騙し続けた恋人も同時に罰せられるんです。ちょうどいいと思いました。
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