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家に帰って、テーブルの上に乗せた立方体を、わたしはしばらくの間ぼうっと眺めていました。
膝を抱いて、眺めていました。
真っ白い箱に、金の細い縁取りの赤いリボン。
やがて、ぶわっと涙が溢れ出て、思いきり泣きました。
誰かに聴こえていようとおかまいなく、嗚咽を上げて泣きました。
今まで生きてきて、他人の姿がこれほど鮮やかにこの目に沁みてしかたないことはありませんでした。
その人になりたいと、震えるほど強く願ったことはありませんでした。
胸が半分にちぎれてしまいそうでした。
ひとしきり泣くと。
わたしは、親指と人差し指でつまんで、ぱらりとリボンをほどきました。
箱の中には、小さな紙切れが一枚。
『あなたが幸せでありますように』
丸みを帯びた癖のあるボールペンの字で、ただ一言。
あぁ、そうかぁ、と納得しました。
サンタクロースは、どこかでこの中身を盗み見していたのかもしれません。
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