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クリスマス当日。
平日でよかったと、わたしはいつものようにホームに降り立ちます。
手には、小さな立方体の包みを大事に抱えて。
白い包装紙に赤いリボンは、ちょっとベタな気もするけど、いちばんプレゼントらしい組み合わせをと選びました。
改札を抜けると、あの人はいました。
ところが。
あの人は、いつものようにベンチに腰を下ろしてはいなくて、まっすぐこちらを向いて立っていました。
ドキン、と心が波打ちます。
目が揺れます。
思わず、その場で足を止めてしまいました。
あの人は、黒目がちの目でじっとこちらを見据えて、きゅっと口を真一文字に結んでいました。
やがて、黒いコートの影から、何かを取り出そうとします。
と、同時に。
タータンチェック柄のジャケットを羽織った女の人が、颯爽とわたしの横を通り過ぎるのが。
まばたきすら忘れたわたしの目の端っこに映りました。
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