青臭い思い出

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「まさやが?雛子に?」 「うん」 「信じられねぇ!まさやって小学校の時から、女の子にスッゲェ人気だったんだぜ?あいつ、完璧だよなぁ・・雛子も何の不満があるんだろ・・」 「・・・・、お前ってヤツは、救い様の無いヤツだ・・・」 「何だよ?」 「いや、良いよ・・・」 山崎は、それ以上何も言わなかった。  母校の特色は、モードの切り替えの早い所だった。学生ってやつは、一旦「お祭りモード」や「お遊びモード」に突入すると、他のモードへの切り替えが難しい。だが、母校の先生達は、有無も言わさず課題を次から次へ出し、学生達がモタモタしている隙を与えなかった。自己管理能力に劣る若者達は、そういう学校の体制に、かなり助けられたと思う。 三年生になると、俺達は受験一色になった。殆どの生徒が国立狙いで、俺も例に漏れず、理系の中でも日本屈指の国立大を目指していた。文系のまさやと山崎が、俺と同じ大学を第一志望にしていると聞いた時、俺の中に高校受験の時のような動揺は、まるで無かった。 「まさやは出来るからなぁ・・、でも俺はさぁ・・」 これが、その頃の山崎の口癖だった。俺達は、インフルエンザにだけはかからないように気を付け、受験に挑んだ。センター試験が終わった或る日、山崎が血相を変えてやってきた。 「雛子、お前、国立受けないんだって?」 「うん」 「勿体無いよなぁ・・」 「山崎・・、アンタねぇ、おりこうさんが、み~んな国立大に行かなくちゃいけないって、そういう法律でもあるっての?誰が決めたのさ?」 「・・・お前、顔が怖いよ・・」 「良いのよ、私には行きたい大学があるんだから!」 「どこ?」 「あんたに話して、何か得な事でもあるの?」 「いや、無いけどサァ・・・知りたいじゃん。おい!たくや、知ってるんだろ?」 「うん・・、何となくは、な。」 「教えろよぉ!」 「山崎、うるさい!」 「クククッ」 「おい、たくやぁ、何笑ってんだよ・・」 「いや、雛子が言いたくないなら、お楽しみって事で・・」 「何だよ、二人して・・ケチ!」 俺は、雛子がある女子大に行きたがっている事を知っていた。そこは雛子のおふくろさんの母校でもあったが、就職率も良いし、エリートとの縁談が日本一多い女子大だ。俺はその時、雛子が大学を卒業したら、腰かけ程度に一流企業に勤めエリートと結婚する、そういう人生設計を持っているのだろうと思っていた「オオバカ野郎」だ・・・。
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