hinako

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 雛子は、F1レーサーと結婚したゴクミに似ている。迫力美人ってやつかな?背がでかくて、スゴイ大股で歩く。「闊歩」という言葉は、きっと雛子の為にあるのだろう。街を歩いていると、みんなが振り返って見る異常なほど目立つ女の子だ。今では俺の方が大きいが、中学入学当初は雛子のほうがかなり大きかった。あいつの第一印象は、あまり良いものではなかった。デカイ上に、物言いがぞんざいで、人を見下しているように見えたからだ。一年生の最初の学級委員は、先生ご指名、と相場は決まっているが、担任は俺と雛子を指名した。雛子は、小学校で児童会会長をやっていた「ツワモノ」で、俺は正直「ついていない・・」と思った。こんな怖い女とやれるかよ!と。だが、一年間あいつと接してみて、第一印象というのが案外あてにならないものだと知った。雛子の物言いがぞんざいになるのは、相手が理不尽な事を言った時だけで、普段は只単に「正直」なだけだった。しかも、正義感が強くて、何にでも立ち向かっていける勇気を持っている女の子・・。それでも時々不安になるらしく、そんな時は必ず俺の方を振り返り、同意を求める顔をする。俺が頷いて見せると、心から安心したような表情をする雛子が、実は誰よりも可愛らしい女の子である事を、俺は徐々に理解していった。俺は、皆が一目を置く雛子に頼られている自分が誇らしかった。不思議な事に、あいつとは三年間同じクラスで、ずっと二人で学級委員をやった。俺は「こんなに気の合う友達は久し振りだな」と思っていた。身長は年々伸び、卒業時には俺の方が10㎝以上大きくなっていた。  雛子とは、高校も一緒だった。高校では一度も同じクラスにならなかったが、あいつはしょっちゅう俺のクラスに入り浸っていた。クラスの連中は冷かしたが、俺達二人は冷静だった。「腐れ縁だよ」と皆の冷やかしを一蹴していた。山崎だけがいつも「ほ~?」とか「へ~?」とか言っていたっけ。ニヤニヤ笑いながら・・。文化祭で「ホスト喫茶」をやった時の、雛子の男装は圧巻だった。他校の女子が「イケメンがいる!」と大騒ぎしたのだが、後で雛子が女の子だと分かった時のその子達の落胆振りに、大笑いしたっけ。
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