3on3

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「ゴチになりまーす」 「スイートポテトドーナツやっぱうめえ! 期間限定と思うと余計うめえ!」 『ゲームの参加料に奢る』という始関の言葉に、汗だくの七人の少年たちは奇声で答えて公園前のコンビニまで疾走すると、ジュースや菓子パンを遠慮なくカゴ二つ分放り込んだ。 そのまま駐車場の片隅を陣取り、戦利品を広げている彼等の横で始関はミネラルウォーターを一気に半分ほど空にして一息吐く。 「そういえば、おでんってもう出てるのか。九月中旬とはいえ日中は暑いのにな。需要があるってことか」 「オッサン、知らないの? 最近は大抵のコンビニはおでん通年販売だぜ」  チームを組んだ青いランニングの少年が「おれ、バイトしてるから」と生意気に口の端を上げる。 「”オッサン”やめろ。始関だ」 「でもさあ、始関サンいきなり乱入してくるとか、やんちゃだよな。オッサンのくせに」  始関は仕事が早く終わると夜の街を愛車でドライブし、気が向いた場所でジョギングをするのが常で、今日は川沿いの団地脇を走っていた。  小さな公園を通りがかると、一基のバスケットゴールの下で少年たちが3on3をしているのが目に入り、その場で足を止めた。 ボールがティン、ティンとアスファルトに反響する尖った音を聞いていると、勝手に身体が動いていた。パスをスティールし、気が付けばレイアップシュートが入っていた。
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