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「うーん。六十代の前半くらいですかね」  女性四人から歓声が上がった。顔の皺の深さはどう見ても七十を越えている。赤毛の女性が顔の横で手をひらひらさせながら体をよじる。 「やだわあ、イケメンの上に口までうまくてえ。いっぱい女の子泣かしてきたんやろ」 ──こっちが泣きたいくらいやわ……。  ひきつる頬を無理に抑えて笑顔を作る。不自然さに気づかれていないかと不安がよぎるが、女性たちだけで盛り上がっていて、洋介のことはモニターの映像程度にしか思っていないようだ。  JOGGERSの男性は早々に見切りをつけてスマホをいじっているから、女性たちが集まればいつもこの調子なのだろう。 「あんなあ、元気の秘訣はおしゃべりやで。肺活量も鍛えられるし、笑うたら免疫力もアップするんやで」  眼鏡の女性が胸を張る。 「そうそう。おしゃべりだけやったら、うちら十代やもんな。そやろ?」  ネコ缶の女性が嬉しそうに洋介の二の腕に手を添える。意外にも湿り気を帯びた冷たい掌の感覚に体がこわばった。     
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