再会を約束した店がすでに様変わりをしているのは知っていた

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「綺麗ね」 「ああ、そうだな」 行き交う人たちが足を止めて、僕たちと同じようにクリスマスツリーを見上げたり、スマートフォンで写真を撮っていた。 「街が変わってしまうのは、寂しいな」 「そうかしら?わたし、あの居酒屋さんも今のこの街も結構好きよ」 新しい居酒屋さんは、料理もお酒も美味しくて、客足の絶えない繁盛店で、訪れる人たちを楽しい気分にさせていた。 駅前の商店街のお店もだいぶ様変わりした。 街は、以前よりも活気づいて、人の往来も多くなった。 でも、僕は悲しかった。 僕の馴染みのお店は、元気のいい居酒屋に変わってしまった。 歩美さんはこの街からいなくなってしまった。 「でも、やっぱり寂しいや」 「そうね」 僕の胸に宿るノスタルジックな悲しみが、僕の胸に宿る理由を、僕は知っている。 写真を職業にしようとしている君も、知っているだろう。 失ってなお、失いたくないと思う気持ち。 僕たちは、あの頃の街に取り残された亡霊のようだ。 それは、毎年この季節になると現れる、このクリスマスツリーが見せる幻想のようなものなのかもしれない。 「ねえ、あの写真見てどう思った?」 僕は黙ってクリスマスツリーを見上げていた。 クリスマスツリーは何物にも染まらずに、堂々と立っている。 「これで、雪でも降ったら素敵なのにね」 「ああ、そうだな」 雪の 匂いがする。 今夜は雪が降ることを、僕は知っている。 雪が降る前にこの思いを伝えないと、蘭に届かないのだろうか。 少し、癪だと思った。
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